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このところ資金繰りが非常に悪く、直近の支払いや銀行への返済をした直後に税金の支払通知が来てしまいました。正直、税金のことを忘れていて、到底すぐに払える状況ではなく、滞納をしていたら税務署から督促状が届いてしまいました。 税金の支払いも大事なのですが、会社を経営していく上で、従業員の給与や取引先への支払いを優先して支払いたいのですが、税金を滞納するリスクはどの程度大きいのでしょうか?
結論から言うと、税金の滞納は会社経営において最もリスクが大きいため、今すぐに滞納してしまった税金を可能な限り支払いましょう。既に督促状が届いている状態で無視をして滞納を続けると会社の財産が差し押さえられてしまう危険もあるため、すぐに行動を開始して下さい。 税金を滞納することのリスクや、どうしても税金が支払えない場合の対応についてこの記事で詳しく解説しているので、今後の対応を確認するためにもまずは読んでみて下さい。
資金繰りの悪化で税金の支払いが間に合わない・・・消費税や法人税などの税金滞納間近に経営者が取るべき対応
会社の資金繰りが悪くなると、経営者としては事業に直接的な関わりがある従業員・銀行・取引先などへの支払いを優先してしまい、税金の支払いが後回しにしてしまうものです。
取引先や従業員は普段顔を合わせますし、もし支払が滞ってしまうと、経営者が相手に直接謝罪をしたり説明をしなければなりません。一方で税金は、相手の顔が見えません。だからこそ、ついつい税金の支払いは後回しにされがちです。
しかし、税金の納付は非常に重要な会社の義務となっているため、対応を誤ると差し押さえ等の強制執行手続きにより一気に会社の資金繰りが悪化し、すぐに倒産まで至ってしまう恐れがあります。
ここでは、もしあなたの会社の資金繰りが悪化してしまった時に、税金の支払いにはどのように対応すれば良いのか解説しています。
税金の滞納を続けた場合の具体的なリスクや、督促や差し押さえまでの流れについては記事の後半で解説しているので確認してみて下さい。
税金の支払いは非常に重要!銀行や取引先への支払いを遅らせてでも、税金の納付を優先する
まずはじめに経営者が覚えておくべき事は、会社の支払先(債務)の中で、税金は最も優先度の高い支払先だということです。税金の支払いを逃れることはできず、もし税金の支払いを滞納すると、すぐに差し押さえを受けるリスクが高くなることになります。
会社の資金繰りが悪化した際に、経営者が支払うべき債務の優先順位で解説している通り、資金繰りが悪化した際に会社が支払うべき債務には優先順位が存在します。 そんな中で、法的な知識の少ない経営者が闇雲に支払い先を決めてしまうことは、支払いを続けながらもさらなる資金繰りの悪化に繋がってしまったり、かえって差し押さえのリスクを上げてしまいかねません。
ここでは資金繰りが悪化しながらもどうにか事業を継続してくためには、取引先への支払や銀行への返済は多少遅れたとしても、税金の納付は優先して行うべきだということを覚えておきましょう。
また、事業が上手くいかず慢性的に資金繰りが悪化しているケースでは、長期間に渡って、「どの債権者に対して、いつまでに支払いを行なっていくべきか」綿密に計画を立てる必要があります。 このような場合は、なるべく早い段階で弁護士に相談することを強くお勧めします。
資金繰りが悪化した早めの段階で弁護士に相談し始めることで、支払先(債権者)への支払の猶予の交渉を代行してくれたり、差し押さえなどのリスクを低くすることができますし、最悪会社を倒産することになってしまう場合でも、経営者自身やご家族、従業員などの影響を最小限に抑えることが可能です。
資金繰りの改善見込みがある場合は、税務署に相談し納税猶予(リスケ)交渉を行う
実は、売掛金の回収が一時的に遅れているなど資金繰りの悪化が一時的な場合や、直ぐに資金繰りを改善できる見込みがあるときは、滞納する前に一度税務署に支払いを遅らせてもらないか相談をすることができます。この納税猶予交渉のことを「リスケ交渉」と言います。
この際に、会社の資金繰り表を持参し、税務署に対して「少し支払い期日を遅らせれば、ちゃんと支払いが可能だ」ということを説明できれば、税務署側も納税猶予(リスケ)や、分割納付に応じてくれる可能性は高いです。
税金滞納のリスク!督促状から差し押さえ手続きまでの流れとは?
税金を滞納すると、まずは税務署から督促状が届き支払い催告に合う
もし、あなたの会社の資金繰りが悪化し、税金を滞納すると税務署から督促状が送られてきます。この督促状とは、支払い催促のようなもので、督促が届き直ぐに支払いを行えば特に問題はありません。
しかし、督促を無視して滞納を続けていると、立て続けに督促が届き、最終的には「〇月〇日までに支払わなければ会社の資産を差し押さえる」旨の警告が届くことになります。
この警告が届いても税金を滞納すると、会社の預金や不動産等の資産が差し押さえられてしまいます。
税金を滞納すると、延滞税が発生する
また、税金を滞納すると、滞納期間に応じて「延滞税」が追加で発生し、支払うべき税金の金額が増えてしまうことも覚えておきましょう。
例えば、消費税などを滞納した場合は、年利14.6%の延滞税を支払う必要があります。この14.6%という金利は、銀行や取引先の支払いをリスケしたり滞納した場合に支払うべき金利と比べても圧倒的に高い率です。つまり、税金を滞納することは会社の税負担をかえって大きくしてしまいます。
税金滞納はリスク大!銀行や取引先とは異なり、滞納するとすぐに差し押さえの強制執行手続きが進められてしまう
前述したとおり、税金の滞納は、他の支払の滞納に比べて、資産の差し押さえを受ける可能性が非常に高いです。極めてリスクが高い滞納と言えます。
実は、税金の支払先である「国」は、銀行や取引先のような民間の会社とは異なり、圧倒的に力強い債権回収力=支払わせる力を持っています。そのため、少しでも税金を滞納すると他の債権者よりも早く差し押さえを行うことができるのです。
参考までに、取引先や銀行が差し押さえを行おうとした場合、裁判所から許可をもらう必要があり、差し押さえ手続きを完了させるまでに1年かそれ以上かかることが一般的です。 しかし、税金滞納の場合だと、税務署が督促状を送付してからわずか10日後から法的には差し押さえを行うことが可能になっています。
通常、督促が届いてから10日後すぐに差し押さえが行われることはほぼありませんが、「わざわざ国が、少額の税金の滞納のために差押えまでしないだろう」と高をくくっていると、本当に差押えを受けることになってしまいます。国は、税金の取り立てを容赦しません。
差押えのリスクとは?消費税や源泉徴収税などの税金滞納で会社や自宅の財産が差し押さえられてしまうとどうなるの?
差押えとは、会社の預金口座などからお金を引き出せないようにして、強制的にそのお金を税金の支払いにあてることを言います。あるいは、会社の持っている不動産や設備など「売ればお金に変えられるもの」を強制的に持っていかれ、売り払われて税金の支払いにあてられるケースもあります。
つまり、差押えを受けると、会社の財産を強制的に支払いに利用され自由に使うことができなくなってしまうのです。
よって、差押えを受けると資金繰りの改善や経営の立て直しどころの話ではなく、事業を続けることすら難しくなってしまいます。更に恐ろしいのは、借金を帳消しにする最終手段である「破産・倒産」をするお金すらなくなってしまう可能性があるということです。
もし破産・倒産をするお金もないとなると、一生、支払うことのできない借金を背負って人生を送ることになってしまいます。差押えというのは、とても恐ろしいものなのです。そして借金をチャラにするための破産手続き自体もできなくなる可能性が非常に高くなってしまいます。
だからこそ、差し押さえはなんとしてでも避けるべきであり、もし既に資金繰りが悪い場合や手元に支払いの督促状などが届いている場合は、直ぐに弁護士に相談し対応を考えることを強くお勧めします。
会社を倒産・破産させる際に必要な費用・コストと言っても、一定の費用がかかります。コストの詳細については、会社の倒産・破産手続きに必要な費用を確認してみて下さい。
税金を滞納すると、銀行からの融資を受けられない・行政の仕事を請けられないというデメリットも
また、税金滞納のその他のデメリットとして、滞納した税金の納付が完了するまでは銀行から融資を受けることができなくなってしまうということも覚えておきましょう。
銀行は融資を行うかどうかの審査基準の中には、消費税など国税の滞納が無いかというものが含まれています。 一般的には銀行などの金融機関は、税金の滞納がある会社は「返済能力が無い会社」と判断するため、税金を滞納してしまうと原則的には融資が受けられません。
更に、自治体などの行政の仕事を請けることが難しくなることもデメリットです。 行政の仕事に入札をする際には、税金の滞納がないことを証明する書類の提出を求められることがあります。ただ税金を滞納していれば、当然その書類を提出できません。 行政の仕事を請けることが多い会社の場合、税金の滞納は、売上の激減に繋がってしまうのです。
上記のようなデメリットを避けるためにも、やはり税金は滞納せずに優先して支払いを行いましょう。
どうしても資金繰りが改善しない・・・会社の倒産や破産手続きに向けてやるべき税金支払いの対応
もし、あなたの会社の資金繰りがどうしても改善できないのであれば、だらだらと税金の滞納を続けるのではなく、真剣に会社の倒産や破産を考えることを、強くお勧めします。
特に、税金滞納のリスク!督促状から差し押さえ手続きまでの流れとは?でも解説している通り、税金の滞納を続けて差押えに合うと、倒産や破産すらできなくなりかねません。税金の滞納が発生したタイミングで、冷静に、倒産・破産をすることも想定して置く必要がります。
以下では、会社を倒産・破産させると決めた場合の、税金・税務署対策を説明します。
弁護士を雇う前に、税務署に対して会社が倒産・破産間近なことを伝えてはいけない
まずはじめに経営者が気をつけるべきことは、弁護士を雇う前に、税務署対しあなたの会社が倒産・破産間近だということを気づかれてはいけないということです。(税務署だけでなく他の債権者にも、ですが)
会社が破産すると、国や銀行・取引先などの債権者は、受け取れるはずだった金額(債権)のほとんどを受け取ることができなくなります。
そのため、あなたの会社が倒産間近だということが周囲にバレてしまうと、債権者は急いで差し押さえ手続きを行なったり、場合によってはあなたの会社の財産を強制的に強奪するなど、どうにか会社を破産される前に支払いを回収しようと行動してきます。
だからこそ、差し押さえなどによって財産を失うリスクを上げないためにも、税務署やその他の債権者に対して、会社が倒産に向けて準備をしているなどという情報は明かさないようにしましょう。
会社を倒産・破産させると決めて弁護士を雇えば税金の支払いをする必要はない
会社を倒産させると決めたのであれば、すぐに弁護士と契約しましょう。
すると、弁護士はすぐに受任通知という書類を債権者に送ります。これは「この会社はこれから正式に倒産します」と、債権者に宣言するのと同じ効果があります。
実際の倒産手続きが開始されると、その会社の財産は全て倒産手続きを行う破産管財人によって管理されることになり、その段階で差し押さえをしても債権者は差し押さえた財産を返還しなければいけなくなります。
そのため、弁護士を雇い受任通知を送ることで、債権者は差し押さえの手続きを行っても意味が無いことを理解し倒産前に持っているお金をしっかりキープすることができるのです。
また、弁護士が経営者の代理人として動いてくれるので、会社や経営者個人に督促状が届いたり、取り立てが来る事は一切無くなります。更に、弁護士が付けば差押えを受けるリスクもなくなるのです。
倒産すると決めたら、弁護士をすぐに雇った方が良いのは言うまでもありません。
税金に連帯保証は存在しない!会社が破産しても滞納した税金を経営者が弁済する必要は無い!
また、会社を破産させても、滞納した税金は経営者自身が支払わなければいけないと勘違いしている方が多いですが、そんなことはありません。会社が破産・倒産したら、それまで滞納していた税金は支払わなくても良いのです。安心して下さい。
会社が破産した後に経営者が会社の代わりに債務の支払いをしなければいけないケースは、「経営者が会社の債務の連帯保証人になっている」場合だけです。 中小企業などが銀行から融資を受ける場合は、経営者が連帯保証人になっているケースもありますが、税金の支払いにはそもそも連帯保証契約が存在していません。
そのため、どんなに税金の滞納額が大きい場合でも、経営者が会社の代わりに個人で税金を支払う必要はありません。
資金繰りが悪化し、税金を滞納しそうな場合はまずは弁護士に相談を!
いかがでしたでしょうか。
ここまで、会社の資金繰りが悪い場合や、会社の倒産手続きに向けて動く場合に必要な税金対応について解説してきました。
もし、あなたの会社が既に資金繰りに悩んでおり、税金だけではなく他の支払いも滞納しそうな状態なのであれば、今すぐに弁護士に相談し、今後の対応について相談することを強くお勧めします。
弁護士に相談することで、税金をはじめとする全ての債権者を整理し、差し押さえのリスクを把握できるだけではなく、会社や事業の存続が可能なのか、すぐにでも倒産・破産に向けて行動するべきなのか理解し、行動を開始することができます。
また、会社の倒産と聞くと経営者自身の生活や、ご家族への影響についても不安が大きいかもしれませんが、破産をすることで借金の取り立てから解放されすぐに再起を図ることができるのも事実です。
会社を倒産・破産する場合に経営者が家族を守るためにできることや、会社の倒産・破産時に、経営者自身の財産を残すためにできることについては別の記事で解説しているので確認してみて下さい。
※本記事は、経営リスクバスターズ編集部が専門家にヒアリングを行った上で記事を執筆し、専門家に監修を受けたものです。
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